あなたを、想う。
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NEWS

「あなたを、想う。」予告編を公開しました。

・11月2日(土)〜東京 ユーロスペース、神奈川 横浜シネマリンでの公開が決定しました。

香港&台湾ニューウェイブと共に生きた女優、シルヴィア・チャン。
その監督として、新たなる波を起こす、先鋭的な傑作の誕生。

 台湾出身の映画人であるシルヴィア・チャンの名が世界に轟くようになったのは、70年代末に始まる香港ニューウェイブ映画の潮流に、主にスター女優として関わったことによってだ。アン・ホイ、徐克ら香港ニューウェイブ第一世代の旗手的監督の作品からジョニー・トー、スタンリー・クワンら当時の新世代監督の作品まで、多くの名監督の作品に出演し、国際的な評価、人気を確立した。また当時の香港ニューウェイブ映画の拠点となっていたシネマシティが製作する娯楽大作でも、看板女優の一員として活躍した。
 けれどその間、彼女は生まれ故郷の映画界を見捨てていたわけではない。香港での活躍に較べると広くは知られていないが、香港ニューウェイブに数年遅れて始まった台湾映画の新しい波もまた、彼女の深い関与によって発生したと、いま振り返ると言えるからだ。
 香港ニューウェイブは、既存の映画業界内からではなく、テレビドラマ等"外の世界"で才能を発揮していた新しい血を映画界に引き入れることによって始まったと総括できるが、その模式を台湾に当てはめ、現地に新しい波が起こるきっかけを作ったのが、ほかならぬシルヴィア・チャンだった。台湾映画界にニューウェイブが発生する直前の1981年に作られたテレビドラマ・シリーズ「十一個女人」がその最初の一歩。そこでプロデューサーを務めていた彼女は、自らも一部エピソードの監督や出演を担いつつ、まだ映画監督デビュー前だったエドワード・ヤン、柯一正らを他のエピソードの監督に招き入れる。そしてその成功をバネに翌年作られたのが、台湾ニューウェイブの幕開けを告げた全4話オムニバス「光陰的故事」だった。同作でエドワードや柯一正は、映画監督デビュー。シルヴィアも第4話で主演を務めた。続く83年、いよいよエドワード・ヤンが長編映画監督としてデビューした「海辺の一日」が生み出される。新人監督による芸術指向の強い作品だったにもかかわらず、本作には香港系資本シネマシティも製作に入っているのが目を引くが、これもシルヴィア・チャンが主演を務めていたことと無関係ではない。同年、柯一正も「帯剣的小孩」で長編監督デビュー。やはりシルヴィア主演、シネマシティ製作という組み合わせで実現したものだった。この作品では、柯一正の息子も子役としてスクリーン・デビューする。後に「あなたを、想う。」で主演する柯宇綸だ。
 このように台湾映画の新しい波の勃興に絶大な貢献をしてきたシルヴィア・チャンは、やがて自らも映画作家として歩み始める。そして「最愛」「君といた永遠」「20、30、40の恋」などの作品で、監督としての評価を築いていった。ただ、産業として台湾以上に商業化されていた香港映画界に半分足場を置いていたせいだろうか、あるいは台湾ニューウェイブが芸術性に重きを置くばかりに観客離れを起こしていった姿を目の当たりにしてきたせいだろうか、彼女の監督作は総じて、商業映画として一般観客に分かりやすく語っていくことを重視した作風で知られてきた。そんななか、監督としての定評を完全に確立した彼女が、ついに芸術性、先鋭性の方向に大きく舵を切って作ったのが、この度日本公開される「あなたを、想う。」だ。

 屋上に立つヒロイン(イザベラ・リョン)の引き画、台北市街の光景をバックに赤い塗料のついたヒロインの手をアップでとらえた画……。この冒頭の数ショットの積み重ねだけで、これから始まろうとしている映画が、これまでのシルヴィアのマイルドな作品とは根底的に異なるものであることが雄弁に物語られている。全編を通じ、時に物語の分かりやすさを犠牲にしてまで導入される、省略を多用した鋭利な編集。そして各ショットの尋常ならざる強度。たとえば、チャン・シャオチュアン演じる彼氏と食事中に喧嘩したヒロインが、その後、街を彼氏と無言で歩くショットや、その後、駅で彼女を見送るチャンをとらえたショットに漂う、ただならぬ力感はどうだろう。こんなショットが撮れるシルヴィアを、彼女の作品の長年のファンでさえ、初めて見たのではあるまいか。
 物語の構造も、いつになく多中心的だ。基本はヒロインとその兄(クー・ユールン)の話。しかしそこに、彼らの親や、ヒロインの彼氏の過去から現在に至る話も絡んでくる。特に兄妹の母親(リー・シンジエ)は、出番こそ兄妹よりは少ないものの、モノローグのように聞こえる語りも入れられるなど、本作のもう一つの中心と言えるような立ち位置が与えられている。現在と過去を、時に夢幻も交えながら自在に往還する時制構成も、挑戦的だ。そして兄妹の故郷・緑島と台北という、台湾に共存する別世界を平行して映し出す、複数的な視点……。
 ニューウェイブの才能を時に背後から、時に役者として支えてきた存在から、自らが監督として前面に立ち新しい波を継いでいく存在へ。「あなたを、想う。」には、そんなシルヴィアの決意さえ漲っているように見えてくる。

暉峻創三(映画評論家)

INTRODUCTION

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台北と、台東。
美しい光と影の、映像世界。
内面深くあまりにも切ない、
シルヴィア・チャン、作家の極地。

両親の離婚で離れ離れになった兄妹と、妹の恋人。3人の心の揺れや親への想い。その切なすぎる物語を、台北と台東の圧倒的に美しい風景の中に綴っていく。3人の若者の過去と現在が複雑に交錯しながら繰り広げられる物語の脚本をシルヴィア・チャン監督と共に手がけたのは、台湾で活躍する日本人俳優・蔭山征彦。彼が温めていた3つの短編の脚本が監督の目に留まり、1本の作品へと結実した。2015年に台湾を皮切りに各地で公開され高い評価を受けて、香港電影評論學會大奨で最優秀脚本賞を獲得。ヒロインに香港女優イザベラ・リョンを起用、彼女の恋人役を「花蓮の夏」「GF*BF」の人気俳優チャン・シャオチュアン、兄役を40年近いキャリアを誇る実力派クー・ユールンが演じた。また、兄妹の母をかつて監督に見出されたリー・シンジエが務め、蔭山征彦も写真出演している。

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STORY

わたしにとどけ…、あなたのこころ。
それぞれの想いが生む、
忘れえぬラストシーンへ。

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台東の沖にある、美しい島・緑島で生まれたユーナンとユーメイ兄妹。二人に毎日のように人魚の物語を話して聞かせる母は、息子と夫を置いて幼いユーメイだけを伴い台北へと去り、間もなく他界した。月日は流れ、駆け出しの画家となったユーメイは、家族を引き裂いた母への怒りを抱えて生きている。ユーメイにはボクサーの恋人ヨンシャンがいるが、試合が近づいて過敏になる彼に妊娠したことを告げられずにいた。網膜剥離であることを隠して試合に臨んだヨンシャンは、コーチに選手証を取り上げられ途方に暮れる。彼にとってボクシングは、亡き父と自分を繋ぐ唯一のものだった。一方、ユーナンは台東で旅行ガイドとして忙しく働きながらも、孤独の中で過去を思う日々を送っている。ある夜、台風で足止めされて立ち寄った店で、ユーナンは、あまりにも切ない幻影に遭遇する……。

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DIRECTOR

シルヴィア・チャン

シルヴィア・チャン 
張艾嘉

1953年7月21日生まれ。台湾出身。生後間もなく空軍将校の父が殉職し、母と渡米。台北の小学校を卒業後に香港に移住。高校で台湾に戻り16歳で芸能界入りした。「海辺の一日」(83)「フルムーン・イン・ニューヨーク」(89)をはじめ数々の映画で俳優として活躍し、78年に「舊夢不須記(別名:某年某月某一天)」で監督デビュー。その後も「恋人たちの食卓」(94)「呉清源〜極みの棋譜〜」(06)など、俳優活動と並行して多くの作品を手がける。主な監督作に「最愛」(86)「少女シャオユー」(95)「美少年の恋」(98)「君のいた永遠(とき)」(99)「20.30.40の恋」(04)など。近年の監督作に「妻の愛、娘の時」(17)、出演作に「夕霧花園」(19)がある。

シルヴィア・チャン コメント 
─ なぜ ≪ あなたを、想う。≫ を撮ろうと思ったか ─

この世界は混沌としていて、人々は疎遠になっています。
雑音騒音が絶えず、人の目をくらませ耳を聞こえなくさせます。
私はただ静かに観客と対話をしたいのです。
幾つかの問いかけをして、一緒に答えを探し出したいのです。
「世界が美しいことをまだ信じられますか」
「忠実に自分と向き合う勇気がありますか」
「ある日携帯がなくなり、パソコンを盗まれたら、自分と向き合うことができますか?」
「私たちと両親との関係はどのくらい深いものですか?」
「まだどなたかが優しく話をしてくれますか?」
これらの問いは、全て単独でも一本の作品になります。
しかし、私は現代人の欲張りな心で、一本の映画で表現してみようと思ったのです。
物語の中で、一筋の明るい光が見えることを祈っています。

CAST

イザベラ・リョン

イザベラ・リョン 
梁洛施
(ユーメイ役)

1988年6月23日生まれ。マカオ出身。ポルトガル人と中国人の母の間に生まれた。生後間もなく父が他界。93年に香港に移住して12歳でモデルとして芸能界入り。中学卒業後、04年から歌手として活動するようになった。05年に「the EYE3」で映画に進出。06年の主演作「イザベラ」「Tattoo-刺青-」で評価を高めた。その後「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」(08)でハリウッド映画にキャスティングされ、一層の活躍が期待された。しかし、09、10年に当時の恋人だった大富豪の息子との間に双子を含む3児を出産したため休業。11年に破局後もしばらく芸能界から遠ざかっていたが、本作で復帰した。最新作は19年1月公開の香港映画「恭喜八婆」。

チャン・シャオチュアン

チャン・シャオチュアン 
張孝全
(ヨンシャン役)

1983年12月28日生まれ。台湾出身。18歳の時に台北の地下鉄で「藍色夏恋」の主役を探すイー・ツーイェン監督にスカウトされる。01年からモデルとして多くのTVCMに出演するかたわら演技活動を開始し、ドラマ「孽子(ニエズ)」(03)で脚光を浴びた。その後、「花蓮の夏」(06)で映画界でも注目の存在となり、数々の映画やドラマで活躍。「GF*BF」(12)では台北電影奨最優秀主演男優賞を受賞した。14年には行定勲監督の日中合作映画「真夜中の五分前」に出演。15年には第10回大阪アジアン映画祭でオーサカAsiaスター★アワードを受賞している。他の主な作品にドラマ「最後はキミを好きになる!」(11)、映画「台北の朝、僕は恋をする」(10)など。

クー・ユールン

クー・ユールン 
柯宇綸
(ユーナン役)

1977年4月28日生まれ。台湾出身。父は映画監督のクー・イージェン。83年の「搭錯車」から子役として活動。父が監督した「帶劍的小孩」やホウ・シャオシェン監督の「恋恋風塵」(86)、エドワード・ヤン監督の「「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(91)などの作品に出演し、早くから台湾映画界を代表するバイプレイヤーとして存在感を示した。その後、再びエドワード・ヤン監督に起用された「カップルズ」(96)をはじめ、「一年之初」(06)、アン・リー監督の「ラスト、コーション」(07)「台北の朝、僕は恋をする」(10)など多くの作品で活躍。11年の「Jump Ashin」では各賞を受賞した。17年は「台北暮色」で味わい深い演技を披露した。

リー・シンジエ

リー・シンジエ 
李心潔
(ユーナンとユーメイの母役)

1976年1月23日生まれ。マレーシア出身。18歳の時に新人発掘コンテストでシルヴィア・チャンに見出され、96年に歌手デビュー。99年には香港映画で演技活動も開始した。01年の台湾映画「檳榔売りの娘」で第51回ベルリン国際映画祭最優秀新人賞を獲得。02年の「The EYE [アイ]」で第39回金馬奨最優秀主演女優賞をはじめ各賞を受賞しトップスターに。その後も活躍を続け、「ディバージェンス 運命の交差点」(05)「MISSING ミッシング」(08)や、マレーシア映画「アイス・カチャンは恋の味」(10)、韓国映画「10人の泥棒たち」(12)などに出演。シルヴィア・チャン監督とは「プリンセスD」(02)「20.30.40の恋」(04)で組んでいる。最新作は「夕霧花園」(19)。

TRAILER

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