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キネマ旬報シアター
大型クラウドファンディングを実施

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小林淳一


ミニシアターとしての生き方

2013年に開業したミニシアターであるキネマ旬報シアター(柏)。空調設備や配管など、建物の基幹部分の老朽化、デジタル映写機の入れ替え時期が来ていることなどから、高額な費用が必要となり、現在、「シネファ」でクラウドファンディングを行っている。目標金額は7,000万円。支配人の三浦理高さんに話を伺った。

――クラウドファンディングを発表した時の反応はいかがでしたか。

一番大きい反応は常連さんですね。開館から通ってくれる方がかなり多いし、若い観客も増えてきました。ロビーに設置したコメントボードにも熱い言葉をいただいています。「なくなったら困る」「なくなったらどうすればいいんだ」「がんばってほしい」という声が届きました。

――プロジェクト終了日は2025年11月3日。10月13日時点でのクラウドファンディングの状況ですが、1134名の支援で、約2,240万円の達成という状況です。

1,000人を超える方が支援してくれているのは大きいので、本当にもうスタッフも感激していますし、感謝です。ロビーにはカウンターをつくって募金箱を設置しました。常連さんが週イチとか来られたら、「そうなんだ」と募金を入れてくれる。お年寄りやクラウドファンディングがわからない人もいるので。募金箱でも何百人かの方から、計300万円弱くらい集まっていると思います。足しておよそ2500万。もうほんとに十分すぎるほどの支援だと思っているんです。長く継続するためには目標額が必要なのですが、もしそれに達しなくても、できる限りの工事はさせて頂き、その後はまた日々の売り上げの積み重ねの中から、できる範囲で修繕を行って、1日でも長く継続できるよう努力していきたいと思います。最終的にどんな工事を行なって、今後の見通しがどうなるのか等も、皆様にはご報告させて頂きたいと思っています。

――劇場の歩みについてお伺いしたいと思います。

2013年にスタートして、当初は苦労したんですけど、3年くらいたってすこしずつ、常連のお客さまが増えて、4年目くらいからぐっと動員が上がりました。2017、2018、2019とどんどん伸びました。年間動員のピークは2019年です。ところが2020年、コロナ禍で前年比50%、2021年、2022年も2019年比で約65%、約70%と苦しい状況が続きました。2023年からは少しずつ復調して、2024年、2025年とグッと伸びています。途中、入場料金の値上げもさせて頂いたこともあり、興行収入ベースでは2025年は2019年に匹敵するくらいまで回復してきています。動員の数でいうと月に1万〜多い時で1万3〜4千人。年間12〜13万人の方が来てくれています。

――コロナ禍でミニシアターの危機が喧伝されましたが、お客さんは確実に戻っているということですね。

コロナで考え方を変えました。コロナ前は8割方がシニアのお客さま。どの映画館もそうだと思いますけど、その層がいちばん戻って来なかった。そこで、若い人を取り込むことを考えました。アニメーションの特集など、いろいろな企画をやり、それをブラッシュアップしていった。いま、明らかに客層が変わって。シニアが半分、30、40代もいて、若い人もいるというすごくいいバランスになりました。

――コロナ禍を乗り越えられたとして、ミニシアターの問題として、もうひとつ、シネコンという大きなライバルの存在があります。

シネコンは、自動発券機でチケット買って、ポップコーンとドリンクを買って、映画観て帰るという、効率的な機能じゃないですか。それはそれでいいと思うんです。キネ旬シアターは3スクリーンあるので、いろいろなことができる。この特集に興味があるという人はもちろんいるんですけど、やはり、ふらっと来てみて、「これ面白いの?」みたいなことってあるじゃないですか。そういうふらっと立ち寄れる空間が5,6年かけてできてきたかなという感覚はあります。空間を楽しんでほしい。それで「キネマ旬報」も並べて図書館化しました。内装も変えました。若いスタッフが材料買って作って、自分たちで看板のメニューも手づくりで。メニューも全部変えました。ミニシアターって、それぞれの個性があります。それをつくることで、「ここに来たい」という人が増えていくし、増えていると思います。

――キネマ旬報シアターには、シネコンでできない35ミリ上映の機能もあります。

シネコンは追悼上映しようにも、フィルムしかなくてできなかったりしています。過去の名作に触れる機会は非常に重要なことだと思いますが、その多くがデジタル化されておらず、35ミリでしか上映できません。この劇場には映写マンも複数人います。35ミリは特徴としてこれからも大切にしていきたいし、文化的にも映写マンの技術の継承もしていきたいと思います。

――これからの上映方針というものについてはいかがですか。

原点として、単館系の良質な映画をやりたいと思います。これは開館の時から変わりません。キネマ旬報編集部に当時ハガキが来ていたんです。「ミニシアターが潰れてしまって、観るところがない」と。そこでキネ旬で取り上げた良質な映画をやろうということで、ここがスタートしたとも言えます。ミニシアターの映画も変わってきて、都心部の映画館と同時公開のケースも増えてきました。自分たちでいうのもなんですが、それでかなり上位の数字も出しています。ほかには、ドキュメンタリーや旧作の上映にも力を入れようと思っています。旧作ならかなり前になりますが、「牯嶺街少年殺人事件」は凄かった。ドキュメンタリーなら最近では「どうすればよかったか?」がかなり入りました。ミニシアターにはまだまだいろいろな可能性があると思っています。

――ミニシアターの現在とこれからの在り方についてもよくわかりました。今後とも期待しております。

クラウドファンディングで支援いただいた方、募金していただいた方、ありがとうございます。これからもがんばっていきます。


キネマ旬報シアター
「シネファ」クラウドファンディング


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