
ホウ・シャオシェンは言った。「台北の現在の姿を描けたのは、『台北ストーリー』のエドワード・ヤン以来だ」と。ホウ・シャオシェンの現場で映画を学んできた女性監督、ホアン・シーのデビュー作品。その映画遺伝子は、今回製作総指揮を務めたホウ・シャオシェン譲り。その一方で、「カップルズ」のクー・ユールンが主演のひとりを務めるなど、エドワード・ヤンとの繋がりも見える。我々はそこにホウ・シャオシェンの映像を見るが、ホウは「その資質は自分ではなく、ヤンに近い」と発言している。ホウ・シャオシェン×エドワード・ヤン。引き付けられる、目が離せないカットの数々。台北の街、路地、鉄道、道路、そこに降る雨、そこにある水たまり、その美しさ。そこに生きる人、家族、その強さ。もろくも孤独な魂たちが、美しく、強く結ばれるとき──。車で生活する中年の男。人と混じり合えない少年。「ジョニーはそこにいますか?」という間違い電話を何度も受ける独り暮らしの女。そんな3人が孤独の中、出逢い、また、新しい未来が見えてきたとき、彼女の思いがけない過去が明らかになっていく。台北の<暮色>。物語のクライマックス、そこに、何を見るのか。