
2021年、ユーロスペースで行われた「没後20年 作家主義 相米慎二」(主催:A PEOPLE)。全13本の監督作品が2週間にわたり上映された。コロナ禍にもかかわらず、その動員は驚くべきもので、特に相米慎二を知らない若い観客がつめかけたことが特徴的だった。相米が再発見された瞬間だった。2023年にはアメリカ・ニューヨークで「台風クラブ」「ションベン・ライダー」が一般劇場公開され、その後、公開は全米へと広がった。同年、「作家主義 相米慎二2023」として「台風クラブ 4Kレストア版」が日本公開。相米慎二のマスターピースともいえる「台風クラブ」が4Kで蘇り、多くの観客に衝撃を与えた。同年にはさらに、ベネチア国際映画祭で「お引越し」4K版が最優秀復元映画賞を受賞。相米の世界的な再評価の波が止まらない。2024年には「お引越し」「夏の庭」の4K版の日本公開が行われている。そして、今年。「台風クラブ」が公開された1985年から40年。「作家主義 相米慎二2025」が行われる。3部に分かれて、相米世界を堪能できる。<PART1>としては「公開40年記念上映」をテーマとして「台風クラブ 4Kレストア版」を上映する。「お引越し」「夏の庭」を観た観客にも、再見していただきたい。<PART2>。もう発掘されるものはないと思われていた相米作品だが、まだ、あった。それが「女高生100人(秘)モーテル白書」(監督:曽根中生)だ。テーマは「相米慎二、唯一の脚本作品(杉田二郎・名義)を発掘」。本作は共同脚本として杉田二郎の名前がある。相米ファンならご存じの通り、一部助監督作品で相米が使っていた名前だ。相米は13本の監督作品で1本も脚本を書いておらず、本作は、唯一の脚本作品と言える。しかも監督は曽根中生。相米作品を多くサポートした榎戸耕史をして「相米が最も影響を受けている監督」と語る。また、曽根の自伝では、本作は相米による演出に対するプランが反映されたと語っている。実際、その画面には後の相米作品の貌(かお)が刻印されている。あなたはこの作品のどこにどんな“相米慎二”を見出せるか。<PART3>は「ラブホテル」。こちらも1985年公開作品で公開40年となるがテーマは「俳優・寺田農を悼む」。2024年3月14日に逝去。1周忌のタイミングで相米慎二作品に最も多く出演し、相米作品を高く評価していた寺田を偲びたい。