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CMの撮影現場で仕事をするうち、またカメラの前に立ってみようという気持ちになったのだそうだ。その後は「一年の初め」や「ラスト,コーション」など秀作に次々出演し、俳優としての存在感は再び高まった。
「ラッキーだったのは、その頃からちょうど台湾映画の状況が上向きになってきたということです。映画界が不振だった時期は裏方の仕事をして、よくなってきた頃に演技を再開したわけですから。また映画に出るようになって、たくさんのオファーがありましたが、どれも暗い役ばかりでした(笑)。まあ、暗くてもいいんですが、それでもどこかに温かみを感じさせられたらいいなと思ってやっています」

そう語る彼の作品選びの基準は、監督と話が合うかどうかだという。
「まず脚本を読んで自分の考えを監督に提案します。それが受け入れられないこともありますが、話をする過程で監督と合うかどうかがわかってくるので、一緒にやっていかれそうだと感じたら出演することにしています。幸い、出会った監督はみんな素晴らしく、様々なことを教わりました。僕は常に自分のリアルな感情を、演技を通して観客に見せようと心がけています。若い頃、ヤン監督に言われて理解できていなかったことが、大人になって勉強して、裏方の仕事もやって、徐々にわかるようになってきました。監督からはリアルな映画表現についていろいろ学びました。一緒に仕事をした経験を踏まえて、さらに上を目指したいと思っています」

現在はネット配信を通じて若者と演技について話す場を設け、数年のうちには劇場で公開できる映画を作りたいと意欲を見せる。クー・ユールンの今後にこれからも注目していきたい。

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Written by:小田 香


クー・ユールン(柯宇綸)
1977年4月28日生まれ。台湾出身。父は映画監督のクー・イージェン。83年の「搭錯車」から子役として活動。父が監督した「帶劍的小孩」やホウ・シャオシェン監督の「恋恋風塵」(86)、エドワード・ヤン監督の「「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(91)などの作品に出演し、早くから台湾映画界を代表するバイプレイヤーとして存在感を示した。その後、再びエドワード・ヤン監督に起用された「カップルズ」(96)をはじめ、「一年之初」(06)、アン・リー監督の「ラスト、コーション」(07)「台北の朝、僕は恋をする」(10)など多くの作品で活躍。11年の「Jump Ashin」では各賞を受賞した。17年は「台北暮色」で味わい深い演技を披露した。


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