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ムン・ソリ

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相田冬二


手放しですぐに抱きしめてあげられない。
私に似ているところがすごく嫌で

イ・チャンドンの名作「オアシス」、そしてホン・サンス作品などでも知られる韓国映画の至宝ムン・ソリ。

主演・プロデュースを兼ねた「三姉妹」は、奥行きの深さと明快さを両立させた傑作だ。

名女優の意外な素顔と共に、彼女がzoomインタビューに応えてくれた。

その生の言葉をお届けする。

――主人公である次女ミヨンを体現するあなたには特別な演技アプローチがあり、輝かしいキャリアにまた新たな1ページが付け加えられましたね。

「ミヨンというキャラクターは、表向きには何の悩みも何の問題もないように仮面を被っているんです。ところが内面を覗くと、誰よりも深い闇があって。心の中では病んでいる。子供の頃に暴力的な家庭に育ったので、常に不安を抱えていた。その罪悪感をずっと持ち続けていたので、宗教に走ってしまった。だから、あそこまでこだわっていたのだと、私は理解しています。彼女には完璧主義的な性格があり、本心を隠して表に出さないところがある。

何か問題が起こると自分自身で解決しようとする。実は、それは私の中にもある部分なんです。そういう自分は好きではないので、ミヨンを演じながらも、何とか自分を変えたいと思ったりもしました。なので、ミヨンのことはすぐに理解はできましたが、なかなか時間がかかりました。手放しですぐに抱きしめてあげられない。私に似ているところがすごく嫌で」

――だからなのでしょうか。キャラクターの解釈がかなり深く、冷静かつ的確な演技表現が、人物像を立体的にしています。完全に内向的な方向に向かっている長女や、自由奔放に生きようとして上手くいっていない三女の狭間でリアルに存在しています。彼女のメンタリティをどのように捉えていましたか。

「彼女は次女ですが、内面のアイデンティティは長女としての意識が強かった。家族に対しても責任感が強い性格でした。内面のメカニズムが長女の心なので、生存本能も強いし、欲望も強かった。それを教会という社会の中で叶えようとしていました。神が治癒してくれる。神が自分の欲望を叶えてくれると思っていた。しかし、なかなか心は癒やされない。欲望も叶えられない。心の闇をずっと抱えていた人間でした」

――それにしても、ムン・ソリさんご自身が、問題をひとりで抱え、自分で解決しようとする人だったとは!

「私は、現実に長女なんです(笑)。父方、母方あわせても、いとこの中で最年長。いちばん上。とにかく長女の気質が強いんですよ(笑)。常に、周りがどう動いているのか、知らないと気が済まない。そういう性格なので、今回の映画でプロデューサーの役割もできたのかもしれません。『私たちの生涯最高の瞬間』という女子ハンドボールの映画の撮影現場で、こんなことがありました。本来、カットがかかるとキャストは監督のいる方にいってモニターをチェックしますが、このときはハンドボールのコートがあまりに広いので、移動できなかった。そのとき、周りの出演者たちが私に訊いてくるんです。

『いま、撮影はどういう状況なのか? 次はどうなるのか? いま、何を待っている状態なのか?』と(笑)。全部、私に訊いてくるんです。そのとき、私のあだ名は『目が100個・耳が100個』でした(笑)。常にいろいろなものを見たり聴いたりしていると思われていたようです。確かに私は、周りの状況がどうなっているか理解できると気持ちが楽になる。ちょっと珍しい性格かもしれませんね(笑)」

――アンテナが立っていて、様々なものをキャッチできるのは、演技者として有利だと思います。

「アンテナなのか、角なのかわかりませんが、何か発達しているのかもしれません(笑)」

――あなたは、主演作を監督してもいますね。ムン・ソリはどのような女優だと認識していますか。

「私はプロデューサーのときも、監督のときも、女優のときも、領域は同じだと思っています。映画という『ひとつの部屋』の中にいて、部署が違うだけだと。大変さはあまり変わらない気がします。私自身はただ『映画を作る人』だと思っています。女優としてスタートしたときから、こういう女優になろうとか、こういう方向性に行こうと決めていたわけではありません。

与えられる作品をひとつひとつやっていくうちに、あ、ムン・ソリが歩く道はこうなんだと。自ずと道が出来てきた。この道があるから、この道に行ったわけではなくて、道が出来てきて、それが私の道になった。まだ女優として途上にあるし、これからどんな女優になるかわかりません。いま現在は『頑張って映画を作ってる人』です。映画という『部屋』の中では、演技をする部分が多い人だとは思っています」

――まさに、フィルムメーカー。この意識こそが、あなた自身を開拓したのかもしれませんね。

「ありがとうございます!」

――『同じ部屋』で、映画の面倒を見ているんですね。

「これからも、一生懸命面倒を見ていきます(微笑)」

――日本語であなたのような人のことを「世話焼き」と言います。世話焼きはみんな情が深い。

「セワヤキ……(笑)。ありがとう」

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「三姉妹」


「三姉妹」

監督・脚本: イ・スンウォン
製作: キム・サンス/ ムン・ソリ
出演:ムン・ソリ/キム・ソニョン/チャン・ユンジュ/チョ・ハンチョル
2020年 /韓国 /115分
配給:ザジフィルムズ
(c)2020 Studio Up. All rights reserved.

6月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー


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