写真右:トゥアン・ジュンハオ

MOVIE / COLUMN
俳優で見る「台湾ニューシネマ×台北暮色」その2
トゥアン・ジュンハオ/ガオ・ジエ

父親の友人であるホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の現場で映画修行に励んだホアン・シー(黄煕)は、2017年「台北暮色」で監督デビューを飾った。台北の今を生きる3人の孤独な男女を描いた作品は、ホウ・シャオシェンがプロデュースを手がけたが、彼はホアン監督に対してアドバイスすることはなく、撮影現場に顔を出すこともなかったそうだ。確かに、この作品からホウ監督の影響を見出そうとするのは難しいかもしれない。それでも、主演のクー・ユールン(柯宇綸)のほかに、脇役として出演している俳優たちのキャスティングに監督の痕跡を感じずにはいられない。

クー・ユールン扮するフォンの友人ジーハオ(致豪)を演じたトゥアン・ジュンハオ(段鈞豪)は、2001年のホウ監督作「ミレニアム・マンボ」では、スー・チー(舒淇)扮するヒロインの、嫉妬深く独占欲の強い暴力的な恋人ハオ役を務めていた。離婚し息子を連れて戻った実家で父親と折り合いの悪いジーハオは、ひょっとすると粗暴でやんちゃだったあのハオの、今の姿なのではないだろうかという気にさせられる。とがった雰囲気の中にも愛嬌があるところは、今も変わらない。

余談だが、トゥアン・ジュンハオは日本との縁も浅くなく、1997年には三池崇史監督、哀川翔主演の「極道黒社会 RAINY DOG」、2000年にはチェン・イーウェン(陳以文)監督、水野美紀主演の「現実の続き 夢の終わり」に出演。2003年にはチェン・イーウェン、チャン・ホワクン(張華坤)監督、宮沢りえ主演の「運転手の恋」にも強盗役で出ている。チャン・ホワクンは監督というよりホウ・シャオシェンの作品のプロデューサー、制作としてよく知られた人物で、「風櫃の少年」「冬冬の夏休み」「恋恋風塵」「ナイルの娘」「悲情城市」などの、監督の一連の代表作を支えてきた。

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写真左:ガオ・ジエ

そして、チャン・ホワクンはホウ・シャオシェンにガオ・ジエ(高捷)を引き合わせた人物でもある。監督は紹介された彼を一目見て「君はアル・パチーノのようだ」と言い、自分の映画に出てほしいと切望。ガオ・ジエは当時台北グランドホテル(圓山大飯店)のシェフだったが、料理人の地位は今よりも低く、仕事への疑問が生じていた時期だったこともあり、監督と何度か会って話をするうちに心が動かされたという。こうして1987年、「ナイルの娘」で俳優ガオ・ジエが誕生した。以降、監督作品には欠かせない存在として、続く「悲情城市」から最近作の「黒衣の刺客」まで全6作に出演。「ミレニアム・マンボ」では恋人に愛想を尽かしたヒロインから想いを寄せられる優しいヤクザに扮し、トゥアン・ジュンハオとも共演した。

監督作品だけでなく、多くの作品でヤクザを演じてきたことで“台湾のゴッドファーザー”とも呼ばれるガオ・ジエは「台北暮色」では、訪ねてきたジーハオの父に持病の薬を渡す男の役で顔を出している。セリフは一言だけ、1分程度の出番ながら、そこにホウ・シャオシェンとの深い繋がりを見出すことができる。さらに言うと、ジーハオの父親役を務めたのは名優チャン・クォチュー(張國柱)だ。彼については、また次回チャン・チェンの項で紹介したい。

文:小田香


台湾映画「台北暮色」
11月24日(金)~ユーロスペース、横浜シネマリン 他全国順次公開

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