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PEOPLE / フィガロ・ツェン
俳優の仕事は「人物を立体的にすること」 日本で活動を始めた台湾俳優フィガロ・ツェンの熱意

photo by:MEGUMI

ネスレシアターで配信中のショートムービー「What is REAL?」に主演したフィガロ・ツェンは台湾を拠点にアジアで活躍する俳優だ。2002年に、アジアで絶大な人気を誇った台湾のボーイズグループ・F4の弟分、コミックボーイズのメンバーとしてデビューし、コミックボーイズ解散後は「イタズラなKiss Ⅱ~惡作劇2吻~」、「ずっと君を忘れない」、「子供はあなたの所有物じゃない」などのドラマに出演し、日本の中華エンタメ好きの間ではよく知られた存在だ。その彼が今年、日本で本格的な活動を始めた。

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「What is REAL?」は、映画「シャンティデイズ365日、幸せな呼吸」やWOWOWの連続ドラマW「東野圭吾『片思い』」などを手がけた永田琴監督の作品。永田監督は旧知のフィガロをイメージして、恋人の誕生日に台湾から日本にやってきた青年アトンが不思議な体験をする物語を書き上げた。約15分の短編だが、フィガロはいろいろ準備をしたという。

「僕は専門学校で写真の勉強をしたのですが、アトンもカメラマン。写真を撮るシーンがあるので、カメラの扱い方をおさらいしました。監督からはアトンの細かい設定についての指示はなかったので、大部分は自分で考えました。映画を観た人に、アトンはたった15分の中にだけにいるのではなく、ちゃんと世界に存在していて、この15分以外にも悲しみや喜びなど、いろいろな感情を持っていると思ってほしかったから、台本に書かれていない細かい仕草も付け加えたりして人物像を作り上げました」

この人物像を作り上げる作業をフィガロは“人物を立体的にする”と表現するが、脚本に書かれている人物を立体的にできるかどうかが、出演作を選ぶ際の決め手になるという。

「台本を読む時に、自分がその役を立体的にできるかということを考えます。その人物がどんな服装や髪型をしているか、過去にはどんな体験をしたのかなどを考えて、その役に興味を持てれば、『ああ、演じてみたい』という気持ちになります」

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劇中、アトンが山でキャンプをする場面があるが、そこは神奈川県の足柄山で撮影された。普段から山が好きで玉山や雪山という3,000メートルを超える台湾の山にも登るというフィガロは、登山になぞらえて仕事に対する姿勢を話してくれた。

「山での撮影はとても楽しかったです。山の“気”を感じながらお芝居しました。僕は登山が趣味ですが、登山は過程が苦しいですよね。登っている途中にいろいろな感情が生まれて、つい、過去のことや将来のことを考えてしまう。そして、頂上ではすごく美しい景色が見られて感動するけど、山頂は寒いし風が強いから長くはいらなくて、また苦しい思いをしながら下山しなければならない。こういうところが人生や仕事に似ていると思うんです。仕事でいい結果が得られても、うれしい、楽しいとばかりは言っていられない。ずっとその状態のままいるのではなく、次のステップに進むべきだと思うんです」

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