アメリカから来た少女

2022年10月上旬より
ユーロスペース(東京)ほか全国順次公開

上映情報→

配給 A PEOPLE CINEMA(エーピープルシネマ)

NEWS

・10月上旬「東京 ユーロスペース」での上映が決定いたしました。

INTRODUCTION

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第58回金馬奨10部門ノミネート5部門受賞
(最優秀新人監督賞、最優秀新人俳優賞、最優秀撮影賞、観客賞、国際批評家連盟賞)

第58回金馬奨では10部門にノミネートされ、最優秀新人監督賞、最優秀撮影賞、国際批評家連盟賞や観客賞など5部門で受賞(主演女優賞にカリーナ・ラムとケイトリン・ファンが揃ってノミネートされた)。2022年の第3回台湾映画評論家協会賞でも最優秀作品賞と最優秀脚本賞を獲得。第24回台北映画祭では最優秀長編作品賞、最優秀新人賞の2部門で受賞した。オーディションで主人公に選ばれたケイトリン・ファンのみずみずしい演技が多くの人に絶賛され、金馬奨と台北映画祭のいずれも最優秀新人賞に輝いた。両親役を務めたカリーナ・ラムとカイザー・チュアンが、彼女と妹役のオードリー・リンを支えている。弱冠32歳にして才能を開花させた注目の若手女性監督ロアン・フォンイーが、SARSウィルスで揺れる2003年、台北を舞台に、乳がんになった母をもつ少女の心の軌跡を、陰影深い圧倒的な映像美で描く、半自伝的映画。「百日告別」のトム・リン監督がプロデユーサーを務めている。

STORY

SARSが猛威を振るった2003年、
アメリカから台湾に帰郷した
13歳の少女と家族の物語。

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2003年冬、母と妹とロサンゼルスで暮らしていた13歳のファンイーは、母が乳がんになったため、3人で台湾に戻ってくる。台北の中学に通い始めたファンイーは、決められた髪型や制服、苦手な中国語の授業、先生の体罰などアメリカとは違う学校生活になかなか馴染めない。幼馴染のティン以外のクラスメイトからは “アメリカン・ガール ”と呼ばれ疎外感を味わい、アメリカの友人に「ここは最悪」とメールを送る。家では母が術後の不調を訴え、9歳年下のファンアンが病気の話でファンイーを苛立たせる。家族と久々に一つ屋根で過ごすことになった父は、妻を心配し娘たちを気遣いながらも、生活のために出張で家を空けざるを得ない。母に対しやり場のない怒りを募らせるファンイーは反抗的な態度を取り続ける。そんな娘に母も感情的になり、親子の溝は広がっていく。乗馬が好きだったファンイーは、インターネットカフェに出入りして台湾の乗馬クラブを検索し、母への不満をブログに書いては気を紛らしていた。間もなく、ブログを読んだ教師からスピーチコンテストに出ることを勧められたファンイーは前向きになる。だが、コンテストの前日、発熱したファンアンがSARSの疑いで病院に隔離されてしまう。

STAFF

監督 ロアン・フォンイー(阮鳳儀)

1990年5月20日、台湾生まれ。97年に母と1歳下の妹と共に米オレゴン州に移住し、2003年に台湾に戻る。国立台湾師範大学付属高校時代、国語教師の影響でヨーロッパ映画への関心を深め、フランス映画が好きだったことから、国立台湾大学入学前に休学してフランスに2年間留学。帰国後、大学の中国語文学部で学びながら、日々映画を見る生活を送る中で独自に脚本を書くようになった。 14年に短編映画「スミアチェック(抹片検査)」を手掛け、翌15年に本格的に映画について学ぶため、ロサンゼルスのアメリカン・フィルム・インスティチュートに入学。映画製作の修士号を取得し、17年に卒業した。自身のアメリカ生活の体験を基に監督した短編映画「おねえちゃん JieJie」が、18年の国際短編映画祭「ショートショート・フィルムフェスティバル&アジア 2018」の最優秀観客賞、高雄電影節の特別審査員賞、HBOアジアンアメリカン・ビジョンアワードを受賞。40以上の国際映画祭で上映され注目を集める。これがきっかけで、金馬奨の脚本ワークショップに参加し、中学時代の自身を投影させた本作「アメリカから来た少女」で長編デビューを果たした。「スミアチェック」の時からアドバイスを受けていたトム・リンが製作総指揮を務めている。他の短編作に「Sophia Dreams」(15)「The Bomb」「Rocks」(16)がある。

撮影 ヨルゴス・バルサミス

1991年、ギリシャ西部のケファロニア島に生まれる。アテネ経済商科大学に進学し金融を専攻。半年間アイスランドで過ごし、世界から隔絶したような絶景に感銘を受けたのがきっかけで2013年から趣味で写真を始める。その後、映画撮影へと興味の幅を広げ、ヘレニック・シネマ&テレビジョンスクールスタブラコス校に学んだ。多くの短編映画でキャリアを積み、撮影を担当した「僕たちと空のあいだ(The Distance Between Us and the Sky、ヴァシリ・カカトス監督)」と「I Am Afraid to Forget Your Face(サメハ・アラア監督)」の2作が 19年、20年のカンヌ国際映画祭短編パルムドールを獲得。 20年には香港の張林翰監督の短編作品「島嶼故事(Last Ferry From Grass Island)」がトライベッカ映画祭で審査員特別賞を受賞。同作に続いて、クリフォード・ミウ(苗華川)がプロデューサーの一人を務めた本作で長編作品を初めて手掛け、第58回金馬奨最優秀撮影賞に輝いた。最新作は韓国系アメリカ人のクリスティーナ・ユン監督、キム・テウ、ホン・ギョン主演の短編作「Motherland」。

CAST

カリーナ・ラム

カリーナ・ラム
(林嘉欣)

主人公の母親役リリーを演じる。1978年8月17日、カナダ・バンクーバーに生まれる。15歳の時にカナダでスカウトされたのがきっかけで、台湾のコンテストに参加し芸能界入りした。ジャッキー・チュンやレオン・ライなど、有名歌手のミュージックビデオに出演した後、1995年に歌手デビュー。ただ、当時は中国語があまり得意でなかったこともあり、台湾の芸能界に馴染めなかったという。そうした時期を経て、アン・ホイ監督の香港映画「男人四十」(02)に出演。ジャッキー・チュン演じる教師と関係を結ぶ女子高生役に抜擢され、期待に応える演技を見せて、第39回金馬奨、第21回香港電影金像奨で最優秀新人賞、助演女優賞を受賞。その後は香港を拠点に多数の映画に出演。
「怪物」(05)や「親密」(08)の演技は高く評価された。2010年、CMディレクター、スティーブ・ユンと結婚し女児を出産。13年には次女が誕生した。その後も活発に活動を続け、日本でも公開されたヒット作「百日告別」(15)では第52回金馬奨の最優秀主演女優賞を獲得。夫が監督・脚本を手掛けた「暗色天堂(Heaven in the Dark)」(16)も、第35回香港電影金像奨でノミネートされるなど高く評価された。また、ジャッキー・チュンとの14年ぶりの再共演も話題を集めた。演技活動のかたわら、子供のための絵本の創作も行っている。その他の主な作品に「カルマ」(02)「恋の風景」(03)「パティシエの恋」(05)「シルク」(06)「キャンディレイン」(08)「恋人のディスクール」(10)「ホワイト・ストーム2」(19)などがある。

カイザー・チュアン

カイザー・チュアン
(荘凱勲)

父親役フェイを演じる。1981年3月22日、台湾生まれ。国立台北芸術大学演劇学科で演技を学び、卒業後は舞台を中心に活動しながら、2005年よりドラマや映画にも出演するようになった。11年のドラマ「波浪而出(Breaking Free)」で第45回金鐘奨助演男優賞にノミネートされて認知度が上昇。舞台で培った演技力には早くから定評があり、15年には「回家路上(The Road Home)」で第50回金鐘奨最優秀主演男優賞を、16年には「菜鳥(Maverick)」で第18回台北映画祭最優秀助演男優賞を受賞し、さらに評価を高めた。他の主な作品にドラマ「ダーダオチェンの夢」(16)「歩道橋の魔術師」(21)、映画「目撃者闇の中の瞳」(17)などがある。豊川悦司、妻夫木聡主演の映画「パラダイス・ネクスト」(19)では殺し屋役を務めた。

ケイトリン・ファン

ケイトリン・ファン
(方郁婷)

主人公のファンイーを演じる。2006年5月16日、アメリカ生まれ。両親と2人の兄の家庭で2歳から台湾で育ち、インターナショナルスクールで学ぶ。演技経験はなかったが、バイリンガルの少女を探す本作のキャスト募集を知った母親に勧められてオーディションに参加。オーディション用の映像を撮る際は父が助けてくれたという。その結果、他の子供たちと一緒に演技クラスに加わることになり、最終的に20人の中から主人公のファンイー役に選ばれて映画デビューを飾った。みずみずしい演技は多くの人の心を摑み、“SSR(Superior Super Rare=特級レア)新人”と絶賛され、第58回金馬奨と第24回台北映画祭で最優秀新人賞に輝いた。映画に続いて、5人組バンドWendy Wanderの「讓我住進你心裡」はじめ、3本のミュージックビデオに主演。

オードリー・リン

オードリー・リン
(林品彤)

次女のファンアンを演じる。2011年、オーストラリア生まれ。1歳の時に家族と台湾に戻る。7歳で劇団に入り、多くのミュージカルに出演し経験を積んできた。妹役のキャスティングが難航する中で、バイリンガルで舞台経験があることが買われ、撮影開始1ヵ月前に起用が決まった。映画は初めてながら、5歳年下の妹を参考に演じて監督の期待に応えた。現在は台北歐洲学校に通っている。歌やダンスのほか、物語を書くことにも興味があるそうだが、演技に対する関心が最も高いという。第24回台北映画祭ではケイトリン・ファンと共に最優秀新人賞にノミネートされた。

「アメリカから来た少女」
4つのポイント

1. 圧倒的な映像の力

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台湾の空港に降り立ち、バゲージクレームで荷物が出てくるのを待つファンイーが見せる、不安と不満が入り混じったような眼差しが見る者をまず強く惹きつける。そして、彼女の置かれた状況が髪型や服装の変化で表される。レゲエ風の自由な雰囲気の髪型やTシャツなど、アメリカ帰りというのが一目瞭然だったファンイーが、髪を短く切って制服を着るだけであっという間にどこにでもいる台湾の女子中学生になるのだ。わずかな照明で映し出される家の中の映像は、そんな彼女の心情を反映するかのように暗い。カメラマンのヨルゴス・バルサミスは、実際そこにある照明器具だけを使用して撮影することを心がけたという。陰影の濃い映像の中に、彼らそれぞれの複雑な思いが浮かび上がる。また、オレンジ色の街灯に照らされた夜の風景も印象的だ。特に、ファンイーが馬に会いに行くシーンは、映画らしい詩情あふれる幻想的な美しさに満ちている。ぜひスクリーンで堪能したい。

2. 少女の痛み 母の弱さ

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5年の間にすっかりアメリカに馴染んでいたファンイー。病気の母親が心配ではあるものの、台湾で窮屈な学校生活を強いられ、全ては母のせいだと不満を抱く。親を失うかもしれないという恐怖や、心の痛みを和らげるためには、母に対して怒りを爆発させるしかない。母は母で不調ゆえに苛立ち、配慮が足りない娘に対して当たり散らしもする。さらに「自分は長生きできない」などと言う。親が子供に向かって口にするにはあまりに残酷な言葉だが、重病を患えば誰しも気弱になるのは当然だ。親だって完璧ではないのだし。でも、13歳ではそれを理解するのも難しい。誰かの正否を問うことなく、病や死が露呈する人の痛みや弱さを、静かに見つめる目が心に残る。

3. 4人の俳優の見事なアンサンブル

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まるで実の家族のようなリャン家の人々。アメリカから戻った娘たちと1年ぶりに会う父親との間は、最初大分開きがあるように見える。だが、母との溝が深まる一方で、次第に父と娘は距離を縮めていく。出張から戻った父の髪を、娘たちがはしゃぎながら染めるシーンはなんとも微笑ましい。娘たちを演じた二人にとって、これが初の映画であり、ファンイー役のケイトリン・ファンに至っては演技自体が初めてだったというのが驚きだ。自身も2女の母親であるカリーナ・ラムは、撮影前に彼女たちと多くの時間を過ごしたという。カイザー・チュアンも交え、密接な関係を築けたことで、4人が本当に家族としてスクリーンの中で生きているのだと感じさせられる。

4. 台北の街と家、その時代を再現

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2003年、SARSの猛威が振るっていた時期を背景にした本作は、当時の様子が見事に再現され時代を感じさせると評判になった。パソコンのインターネット回線はダイアルアップ接続で、今からすれば遅いことこの上ない。ファンイーと友人が訪れる本屋ではジョリン・ツァイの「説愛你」が、ファンイーが一人で入ったインターネットカフェではジェイ・チョウの「安静」といったヒット曲が効果的に使われた。また、彼女たちが話題にするトニー・スンは “台湾のSMAP”と呼ばれたグループ「5566」のリーダーを務めた有名歌手。妹アンの愛読書はその頃人気だった日本原作の少女漫画だ。これら、台湾の人々を一瞬でその時代に引き戻すアイテムがちりばめられている。

THEATER

2022年 10月上旬
ユーロスペース(東京)上映予定