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A PEOPLE CINEMA

アメリカから来た少女
カリーナ・ラム

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小田香


女性は後悔の念とともに
生きていくのではないか

演技生活20年を数えるカリーナ・ラム。30作以上の映画に出演してきた彼女にも「アメリカから来た少女」は特別な作品だったという。

「今回の作品は普通の映画の現場とは全く違っていました。監督は俳優に好きに演じさせてくれたんです。そういう自由をくれたという点がほかとは大きく違うところでした。そして、この映画はロアン・フォンイー監督の自伝的な作品なので、彼女にとってすごく意義の深い作品だと思いました。単なる映画ではなく、特別な作品ということが言えます。そんな作品でご一緒できてとても光栄に感じました」

さらに、映画について「女性の視点から描かれている物語」だと語る。共感できる部分は多かったようだが、最初は母親役を演じることには抵抗があったそうだ。

「一度母親を演じると、イメージが固定化されて母親役ばかりオファーされるということがよくあるのです。それでも、脚本を読んで考えが変わりました。3回に分けて読んだのですが、最初は娘のファンイーのほうに共感を覚えました。それは私自身の境遇に似通ったところが多かったからです。次は夫婦の問題として捉えるという面白さを発見しました。3回目は母と子の視点から見ていきました。私自身二人の娘を持つ母親ですが、母と娘の関係は非常に複雑なものだと感じます」

彼女が演じたリリーは乳がんを患っているという設定のため、母親としての演技だけでなく患者としての演技も求められた。肉体的にも精神的にも病んでいる状態があまりにリアルで、見ているほうも苦しくなってくるほどだ。

「乳がんを患う女性を演じるためにいろいろリサーチをしました。主に二人の乳がん患者の方にお話を聞きました。お二人とも子供を持つ母親で、そのうちのお一人は再発もしたということで、そういう時の気持ちとか状況といった、すごくプライベートなことを語ってくださいました。そういうリサーチを通して私が感じたのは、彼女たちが直面する現実は脚本を超えるものがあるのだということです。そして、やはり母親には誰しも悔いというものがあって、娘にも夫にも、また自分の母親に対してもすまないという気持ちがある。女性はいつも多くの役割がある中で、そうした後悔の念とともに生きていくのではないかと考えさせられました」

母の病気は一家に暗い影を落とし、時に言い争い感情的になることもある。それでも、ちょっとしたことで笑い合う4人の姿に、これが家族というものだと実感させられる。

「私たち4人は撮影前からボウリングに行ったり、ご飯を食べに行ったりしたほか、家のロケセットで過ごしていました。それぞれの場面について、カメラマンと相談もしましたね。例えば、お父さんが娘を叩くところなんかは、1シーンがかなり長いので、カメラワークをどうするかといったことなどを一緒に考えたんです。とにかく毎日みんな一緒でした。お弁当を食べたり音楽を聴いたりする中で、家族のような雰囲気を作り上げていきました。それは家族がご飯を食べるシーンによく表れていると思います」

カリーナの言葉から、監督と俳優の間には深い信頼関係が築かれ、それが作品に見事に結実したのだということが感じられた。

「監督は、現場ではひたすら俳優を観察することに専念していました。具体的に演出するというより、じっくり見ていたんです。監督にとって初長編作でしたが、俳優に任せてその人物に生命を吹き込むことをやり遂げました。そして、演じる側も自分の演技だけに専念すればいいという姿勢でいてはいけないと、私は考えています。どうやって一緒に作り上げるかということを考えることが大事です。監督は私を信頼して、この役の大きな核となる部分を全部預けてくれたのです」

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「アメリカから来た少女」



アメリカから来た少女
監督・脚本:ロアン・フォンイー
製作総指揮:トム・リン
撮影:ヨルゴス・バルサミス
出演:カリーナ・ラム/カイザー・チュアン/ケイトリン・ファン/オードリー・リン
2021年/台湾/101分
原題:美國女孩|英題:American Girl
©Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
配給:A PEOPLE CINEMA

10月8日(土)よりユーロスペース(東京)にてロードショー


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