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「この視点は性格的なものかもしれませんね。子供の頃から何を見ても、芸術的……いや、ドラマティックに捉えがちだったんですよ。悲劇には美しさもあれば、明るさもある。人生、笑ってばかりいたら疲れるでしょう? 人生はコメディではないと思っています」

微笑みながら話す。あえて明言はしなかったが、おそらく彼のロマンティシズムは「人生は悲劇」というしなやかな確信にある。洗練された感性も、シネフィル的な耽溺には距離を置く姿勢も、「人生=悲劇」を取り扱う所作のために奉仕している。

「絵を描くことも、写真を撮ることも、文化的な表現。ひとは何を選択してもいいのだと思います。私にとって、それが映画だった理由は、総合芸術だったから。映画であれば、どんなひとにも伝わる気がする。どのような環境にいるひとにも体験する可能性がある。届けることができる。だから、映画だったのだと思います」

悲しみの昇華。それが芸術であり、映画である。レオン・レのエッセンス。その最良の瞬間はラストシーンに舞い降りる。

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「お気づきだと思いますが、あの場面では、人物の目線、その高さ、その角度に、ある想いを託しています。それが優しく伝わるといいな」

彼もまた劇中の「ふたりの男」同様に、少年性を秘めていることが、その言葉遣いから伝わった。

「映画の深いところまで見てくれてありがとう」

映画のさわやかさが、作者の優しさと、根底のところでつながっている。

だから。「ソン・ランの響き」には深い味わいが横たわっている。

Written by:相田冬二

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「ソン・ランの響き」


「ソン・ランの響き」
監督:レオン・レ
出演:リエン・ビン・ファット/アイザック/スアン・ヒエップ
2018年 ベトナム
©️2019 STUDIO68

新宿K's cinemaにて公開中、全国順次ロードショー


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CULTURE/MOVIE「ソン・ランの響き」