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PEOPLE / メヘルダード・オスコウイ
更生施設に収容された少女たちの豊かな言葉

Photo by : 星川洋助

イランを代表するドキュメンタリー監督として2000年以降、作品を発表してきたメヘルダード・オスコウイ監督。17年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映された「少女は夜明けに夢をみる」は、様々な罪に問われた少女たちが収容されている更生施設の中にカメラを持ち込み、彼女たちの日常をとらえた作品だ。驚くほど和やかで親密さあふれる雰囲気の中で共同生活を送っているように見える少女たちが、信頼の眼差しで見つめるカメラに向かって肉親からの暴力や薬物使用の常態化について語る言葉が重く胸に響く。許可が下りるまで7年にわたってリサーチを続け、撮影に臨んだという監督に話を聞いた。


── この作品の前に少年たちが暮らす更生施設についての作品(「It’s Always Late For Freedom」(07)、「The Last Days Of Winter」(11))を手がけていますね。「少女は夜明けに夢をみる」で少女たちが暮らす施設を訪れて最初に感じたのはどんなことですか?

 施設にいるいないにかかわらず、同い年の少年と少女であれば、女の子の方により深みを感じるであろうと、撮影前から考えていました。しかし、実際撮影していくと、まったく事前には想像できないことでしたが、彼女たちからたくさんのことを学びました。彼女たちの純粋さを知り、生きるということの本当の意味を学びました。私自身は彼女たちのように、一緒に住んでいた家族から危険な目にあわされるという経験はもちろんありません。しかし、彼女たちはそんな経験をした上でなお、人を信用し、尊敬することができる。すばらしい根を持った人間なんだなとすごく驚きました。男女両方の施設で撮影しましたが、少年の方は釈放された後、彼らの社会の中に戻って「俺、刑務所にいたんだぞ」といったようにすごく威張る傾向があります。一方、少女たちの方は収容されていたことを隠さないといけない。彼女たちは釈放されてからも下り坂を転がっていくかのような気がしました。それはすごく大きな違いでした。

── 彼女たちの中には性的な虐待を受けた経験を持つ人も多いですが、男性である監督が生活の場に入って撮影をすることに抵抗はありませんでしたか?

 男性の中にも女性性ともいうべきものがあると思います。私はそれが比較的強い方ですし、妻、娘、母や友人と、周りに女性も多いです。今回の撮影スタッフには女性がいなかったので、最初は手伝ってくれる女性と共に施設の中に入りました。しかし、少女たちは皆壁の方を向いて一切話してくれなかった。たぶん、彼女たちは女性として自立し外で仕事をしている女性たちに嫉妬していたのではないかと後から考えました。その後、もともと自分と一緒にやっていたスタッフよりも背が高くて若い男性を選んで連れていったら、カメラの前でも自由に過ごして話してくれるようになりました。もちろん、私のことを信用してくれなければ話してはくれません。そのためにはまず、自分の話をしないといけないと考え、彼女たちと同じ年頃の時に自分の家族がどんな状況だったか、父が破産して悲惨な生活を送ったこと、一つ間違えばあなたたちのようになっていたかもしれないということを話しました。彼女たちはそれを聞いてから徐々に自分の話をしてくれるようになりました。

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